私は、以前、翻訳の勉強をしたことがあります。
その頃から、翻訳家の「宮脇孝雄」さんの書かれる文章が大好きでした。
「月刊アルコムワールド」というアルクの雑誌6月号の中の「ミヤワキ研究室」を読みました。
If I’d decided it was worth while to dye my hair I’d have dyed it a decent color at least.
「髪を染めるなんて時間の無駄だと思うけど、染めたとしたら上品な色に染めてたわ」
こんな風に訳せるだけでも、素晴らしいとため息が出ます。
私ならこう訳すでしょう。
「もし、髪を染める価値があると決めたなら、少なくとも上品な色に染めていたでしょう。」
全然違いますよね。
しかし、宮脇さんはさらに上をいきます。
『ランダムハウス英語辞典』には、decent の意味が「非難される点がないといった消極的な意味を持つ」という説明が入っていることや、
『オックスフォード英語辞典』には、
Satisfying a fair standard ; fair, tolerable, passable, ‘respectable’ ; good enough in its way
とあることから、
decent は「上品な」は積極的過ぎで、「上品な色に」ではなく、「(赤や緑ではなく)おとなしい色に」染めてた、と訳した方がいいと。
decent という単語一つにも、辞書を「読みこんで」訳されるのです。前後の関係で訳語も変わってくると。
これまた、すごいなーとため息が出ます。
高校生英語で、教科書の上手な訳が出来なくて困ることがあります。
直訳でも、意味がわかっていれば大学受験には十分間に合うのですが、もどかしい思いをします。
宮脇さんは、英語の波にうまくのれるサーファーのようですね。
今日も読んで頂き、ありがとうございました。
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